|
|
|
■留学生インタビュー■
- 第8回 田村麻子さん(マネス音楽院 プロフェッショナルスタディコース 声楽専攻)
by Hironobu
Hamada in New York
・麻子さんは今どこで何を勉強しているのですか?
マネス音楽院(Mannes College of Music)のプロフェッショナルスタディコース(Professional
Study Course) で声楽を勉強して、ついこの間卒業したばかりです。
・プロフェッショナルスタディコースというのは具体的に どういったコースなのですか?
マネス音楽院には、まずUndergraduate, Graduateの2つのコースがあって、 UndergraduateとGraduateのそれぞれにDegree(Master)とDiplomaの2つのコースがあり
ます。プロフェッショナルスタディコースはGraduateのDiplomaコースの中にあります。 また、マネス音楽院にはExtension
Divisionというコースもあり、このコースでは、 自分の取りたいコースを取ることができます。DegreeもDiplomaももらえませんが。
私は、声楽科に所属していて、その声楽科というのは全部あわせて60人ぐらいしか いない小さい学科なのですが、そこではプロフェッショナルスタディが最も”おいしい”
コースだと思います。このコースは、マスターを持っている人が入学できるなど、入学は 難しいのですが、授業料は一番安いんです。また、Degreeを取得する必要がないので、
自分の好きなコースのみ取ることができ、取りたくないものは取る必要はないので、 自分でスケジュールをマネージできます。自分がその気になれば、マスター並に
勉強することもできるんですよ。
・なるほど、それはいいコースですね。
Diplomaがもらえて、Practical Trainingが取得できるのでおいしいわけです。 マスターだと学費が2倍かかるんですよ。これは大きいですね。しかしながら、
声楽科でクラスを取るのは簡単ではなく、例えばオペラクラスだと、学期の始めに オーディションを受けて、それをパスした人だけオペラクラスを受講できます。
また、年に2,3回ある公演に参加できるのは更に選ばれた人たちだけとなります。
・麻子さんの専攻はオペラなのですか?
交響曲を勉強するクラスもあれば、ドイツ歌曲を勉強するクラスもあり、声楽科の中で 専攻をしぼる必要はありません。将来自分が何をやるかはわからないし、どの分野を
中心に勉強していくのかもわからないので、バッハやヘンデルの宗教曲からドイツ、 フランス、イタリア歌曲まで色々な曲を勉強できるようになっています。
・じゃあ、それらの語学に 精通している必要がありますね。
Undergraduateでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語の文法はみっちりやらされますが、 必要ならGraduateの学生もそれらのコースを取ることができます。さらに、歌手は言葉の
発音が命ですので、GraduateにはDictionという歌唱用発音を勉強するクラスがあります。 英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語それぞれにDictionクラスというものがあり、
おもしろいのは、アメリカ人にとっても英語のDictionクラスは大変らしいという事です。
・麻子さんは、それらの言語を話せるわけですか?
一応、すごく精通しているように話すことは要求されます。例えば、オペラの中では 朗々と歌うシーンだけでなく、まるでセリフのように話すシーンも多々あるので、その時
に、「この人、言葉わかってるのか?」と思わせるようではいけないのです。
・それはすごいですね。
でも、これは日常会話を話すということではないので、すごいように見えるかもわかり ませんが、訓練すれば、結構できるようになります。
・そうですか、でも英、独、仏、伊語に 精通しているというのは、やっぱりすごいと思いますが。ところで、麻子さんはアメリカ
に来てどれくらいですか?
2年になります。
・麻子さんがアメリカに留学しようと 思ったきっかけは何ですか?
実は、最初はイタリアに本場のオペラを勉強しに行くつもりでいましたが、たまたま その準備中に受けたコンクールでファイナリスト(入選者)になり、その時に、3大
テノール(ドミンゴ、パバロッティ、カレーラス)の1人であるドミンゴから「今一番 若い人にとってチャンスがある街はニューヨークだ。」と言われたので、イタリア行きを
急遽変更してニューヨークに来ました。彼の言うとおり、昔はパリやベルリンが若い 歌手にとって一番チャンスをつかめる街だったのですが、今はニューヨークです。
あと、もう一つのきっかけは、ヨーロッパに行ってしまうと、例えば、イタリアだと イタリアオペラ、ドイツだとドイツオペラまたはドイツ歌曲、フランスだとフランス
オペラかフランス歌曲しか勉強できないのですが、ニューヨークの場合は、イタリア、 ドイツ、フランスなど色々なところからエキスパートが集まって来るので、ニューヨーク
にいながらにしてそれぞれのものを客観的に勉強できます。なぜ、ニューヨークに エキスパートが集まってくるのかというと、ニューヨークにはお金があるからだと思うのです。
色々なところからよい先生やコーチが稼ごうと思ってニューヨークに来るわけです。 その結果、ニューヨークにエキスパートが集まり、それぞれのオペラを客観的に
勉強できるようになりました。 一般的に、ヨーロッパ人は自国のオペラにこだわる傾向が強く、例えば、ドイツ人 だとドイツオペラにこだわり、イタリア人はイタリアオペラが最高だと思っているの
で(私もそう思いますが)、ヨーロッパに行くとなかなか客観的に勉強できません。
・具体的にヨーロッパのオペラの違いは どういったものですか?
全然違います。中華料理とフランス料理のようなものですね(笑)。
・そうですか、それはわかりやすい。 ところで、麻子さんは留学をどのように準備しましたか?
私はロータリー財団から奨学生に選ばれたので、イリノイ州の本部と連絡を取りながら、 学校選択からビザの取得まで全部自分で行いました。
・TOEFLはどうしましたか?
TOEFLアカデミーというところにちょっと通って、後は問題集をやりながら自分で 勉強しました。
・推薦状はどうしましたか?
日本の先生と、以前から知っていたアメリカの歌の先生にお願いしました。
・留学準備で一番難しかったことは何ですか?
エッセイを英語で書いたり、日本の先生方からの推薦状を英語に訳したりすることが 大変でした。それらの書類は、学校ごとに準備する必要があり、学校によって
書式や要求される書類が異なるので、それらの書類準備が相当大変でした。 訳した英語もチェックしてもらう必要があるので。また、私の場合はデモテープを提出
する必要があって、そのデモテープで提出する課題も学校によって異なるので、それも 大変でした。
・マネス音楽院を選んだ理由は何ですか?
まず、クラスが少人数なことと、アットホームな雰囲気が気に入ったからです。それから、 マンハッタンの音楽学校の中では一番授業料が安かったですしね(笑)。
・今の生活はどんな感じですか?
今は、もう卒業したのですが、実は卒業時に賞をいただき、$1500の賞金をもらったん ですよ。それが非常にうれしかったです。
・それは、すごいですね!
自分の2年間のがんばりが認められたようですごくうれしかったです。実は、マネスでは しばらく声楽科には日本人の生徒がいなくて、私が入学したときには「日本人にオペラ
歌手はいるのか?」といったバカな質問をされるぐらいみんな日本人に対して期待して いなかったんです。最初は私も英語が話せないし、どれくらい歌えるのか疑問視されて
いたと思うんですが、やっぱり声楽科だけに、歌のクラスできちんと歌えば、英語ができなくても それなりに認めてもらうことになり、それが少しずつ自信につながっていきました。
つまり、私がクラスで歌うたびに、「日本人でも結構歌えるもんだなあ。」ということが 徐々に浸透していったわけです。卒業する頃には、アメリカ人はもちろん、各国からの
音楽を勉強しに来ていた友人も増え、また、学校でも認められてとても幸せでした。
・ものすごくがんばったんですね?
はい(笑)。
・休日はどんな感じですか?
昼の間は練習して、夜にはパーティに参加することが多いです。パーティに参加して 知り合いを増やしたり、友達と交流する時間を大切にしています。
・麻子さんの将来の目標は何ですか?
ずばり、欧米で日本人のオペラ歌手として働くことです。例えば、メトロポリタン 歌劇場を見ても誰一人として日本人が見当たりません。中国人、韓国人はいるのに。
実際、欧米の劇場で歌うのは並大抵のことではなく、それなりの経験および語学力が 必要で、またビザの問題など色々なことが複雑にからみあって、本当に大変なのですが、
やってできないことではないと思うので、ぜひこちらで1日も早く歌えるようになり たいです。
あと、何年か後に、ある程度の年齢になれば日本に帰って、自分が色々勉強してきた ことを役立たせたいので、後進の指導にあたりたいです。
・ぜひ、1日も早く欧米の劇場の舞台に 立てるようにがんばってください。応援しています。最後に一言、これから留学を
考えている人に何かアドバイスをお願いします。
私の場合、留学は準備期間も含めすべてのことが勉強になりました。言葉ができずに 不自由して、くやしい思いをした最初の頃や、異文化環境の中でストレスを感じた
ことなどすべてが自分を強くするのに役立ったと思います。みなさんも留学中、また 留学準備中に困難なことに出会った場合でも困難と感じず、乗り切っていってください。
陰ながら応援しています。
あと、どこかで私の名前を見かけたら、「どんな歌を歌っているのか聴いてやろうじゃ ないか!」のぐらいの気持ちで、私の歌を聴きにきてくれるとうれしいです(笑)。
・ぜひ、聴きにいきます(笑)。今日は ありがとうございました。
今、インタビューに 応じていただける人を募集していますので、あなたの留学体験をウェブ上で伝えたいという人は
support@j-newyork.comまでメールください。
資格は、基本的に留学生であればだれでもOKです。
|
|