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■ニューヨークレポート■
by Hironobu Hamada in New York, 3.1.2000
2月25日、ギニアからの黒人移民に41発もの銃弾を発砲し、死に至らしめた
4人の白人警官に、陪審員はすべての罪状に対し無罪の評決を言い渡した。翌日、
その評決に伴い、無罪評決に怒り狂った住民により、五番街などでデモが行われた
。
ことの発端はこうである。1999年2月4日午前12時40分、ニューヨーク
市の サウスブロンコス地区で4人の警官が22歳の黒人移民ディアロ氏に職務質問
しようとし、その後 41発を発砲、そのうち19発が命中し、ディアロ氏は死亡した
。事件当時ディアロ氏は武器を持っておらず、アパートに帰る途中であった。この
時、4人の警官は凶悪なレイプ犯を捜索中で、一人の警官の証言によると、ディア
ロ氏は事件当時よそよそしく、アパートの玄関口からのぞきこむように警官を見つ
めていたが、逃げるようにアパートに向かって 歩き出した、ということである。そ
の後、警官が職務質問しようとすると、彼は最初何も答えず、さらに警官が問いつ
めると、彼はジャケットの裏ポケットから何かを取り出そうとした。 警官は、「黒
いもの」を見、それが銃に見えたのである。その後の経過は先に述べた通りである
。
結局その「黒いもの」は彼の財布だった。彼がなぜそのような行動をしたのかは
「死人に口なし」で不明であるが、おそらく英語が理解できなかったものと思われ
る。
この事件が注目されている理由は、第1に、彼に発砲した警官が全員白人で、 デ
ィアロ氏が黒人だったという点である。アメリカでの白人黒人間の確執は根強いも
のがあるが、この事件はその確執をさらに深めるような事件であった。 もし仮にデ
ィアロ氏が白人であったなら、発砲されず死亡することもなかったかもしれない。
黒人を始めとするマイノリティーは、この事件をアメリカ社会に根付いた人種差
別の象徴である主張している。マイノリティーであるが故に、最初から 「疑いの目
」が向けられる。
この事件が注目されているもう一つの理由は、「41発の発砲」という点である
。1発や2発ではなく、なぜ「41発」も発砲する必要があったのか。先に述べた
ようないろいろな要因が考えられるが、これは明らかに行き過ぎた行為ではないだ
ろうか。 多くの人々が抱いている「なぜ 41発も発砲されたか?」という疑問につ
いては、無罪評決が出た今も、明確な回答が出されていない。
では、アメリカにおける人種差別の実体とはいかなるものなのだろうか?
アジア系の日本人にも関係があることである。「アメリカに 旅行したけど、みん
な親切で人種差別なんか何も感じなかった。」という人も多いし、「留学していた
けど、差別なんか何も感じなかった。」という話はよく聞かれる。しかしながら、
それは旅行や留学という一時的なアメリカ生活で感じたことであって、就職や結婚
となると違ってくる。白人でなければ有名企業では出世できないとか、娘を黒人や
アジア系(日本人を含む)とは結婚させないといった話がよく聞かれる。
このように、人種のるつぼと言われるアメリカ社会には、「人種差別」といった
問題が深く根付いている。
一時的な旅行や、短期間の留学では、あまり深い問題にぶつかることはないかも
しれないが、「人種差別」という問題が根付いていることは事実であり、今回のデ
ィアロ氏の事件により、この事実が再認識された。
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