■Malaysia
Boleh■
〜 第7回 「マングリッシュ?ジャパニッシュ?」
by
KAORI KIKUCHI , 05.26.2003
私がマレーシアのスバン国際空港に降り立ち、住まいとなるコンドミニアムに到着して 一番にしたこと。それは、「テレビのスイッチをいれる。」
なぜなら、マレー語とはどういうものかを聞いてみたかったからです。 日本を出発する前に、「マレーシアの国語はマレー語だよ。」と聞いてはいたのですが、
果たしてそれがどんな感じの言葉なのかまったく想像できませんでした。 実際聞いてみて、結構違和感なく、心地よく耳に入ってきました。
(どんなサウンドの言語なのかは、皆さんのご想像におまかせします。) ということで、今回はマレーシアで使われている言語の不思議についてお話したいと思います。
今までの連載の中で、マレーシアは多民族国家だとお話しました。 なので、国の中で使われる言葉もさまざま。国語はマレー語となっていますが、
公用語として、英語、中国語タミール語が使われています。 でも、この公用語の「英語」ってものがクセモノなのです。
「英語」と聞くと、中学・高校で習ったちゃんとした文法で、 意味の通るものを想像される方が多いでしょう。
でも、マレーシアではその常識が覆されるほど、独特のマレーシア・イングリッシュが話されています。 名づけて、「マングリッシュ」!!
一番よく耳にするのが・・・
★”〜lah”(○○○ラー)
例えば、「OK,lah!」「No problem,lah!」のように使います。
文の語尾に、「lah」をつけて、「〜だよ」というニュアンスをつけるようです。 特に中国系マレーシア人のおじさんがよく使っているのをよく耳にした気がします。
でも、この表現には注意点が一つあります。とてもカジュアルな表現なので、 友達同士、家族の間でしか使いません。けっして初対面の人や、自分より目上のひと、ビジネスの場では使わないように!
◇ここで、ちょっとおもしろ話◇
日本で友達と待ち合わせをする時、「○○デパートの1階のカフェでね。」と言えば たいてい約束していた人と会えますよね?でも、マレーシアではもうひとつ確認が必要なのです日本で言う1階は、マレーシアでは「グランドフロアー」、2階が「ファーストフロアー」と呼ばれています。
なので、この場合、「日本の1階、マレーシアのグランドフロアーでね。」
と約束しなくてはいけないのです。 う〜ん、ややこしいっ!慣れるまでは、ちょっと頭が混乱します。 私がマレーシアに行って間もない頃、実際、この階の数え方が原因で友達と待ち合わせをしていたのに
会えなかったことがありました。待てども待てども友達は現れないし、携帯も持っていなかったので 連絡も取れない。後で聞いたらやっぱりお互いが違うフロアーで待っていたみたいです。
友達はやっぱり長年マレーシアに住んでいた人でした。 マレーシアの英語がブロークンであっても、基本はブリティッシュ・イングリッシュ。
昔、英国の植民地だった名残でもあります。
★”〜isn't it?”
日本で習う付加疑問文のつくり方では、前の文をみて後ろの付加疑問文を決めますよね? 例えば、「You don't
see it,do you?]みたいに。 でも、マレーシアでは文法を気にしない傾向が強いみたいで、どんな文でも「〜isn't,it?」とつけます。
「You went to morning market and
bought a lot of food,isn't it?」のようにです。過去であれ、
未来であれ、現在のことであれ、合意を求めるときはおかまいなしに「Isn' it?」です。 結局は、ニュアンスと言いたいことが伝わればいいという精神で英語を使っているのでしょうね。
文法にこだわりすぎて英語をしゃべれない日本人と言われますが、ちょっとはマングリッシュを見習ったほうがいいのかも・・・
他にも、マレーシアでしか聞けない英語が盛りだくさん! いくつか紹介したいと思います
●”I go back first.”(先に帰るね。)
本当に、文法を無視した文ですね。正確には、”I have to go back earlier than
you."なのです。
●”Let's go makan!”(ごはん食べに行こう!)
英語とマレー語が一緒になったセンテンス。私もマレー語を習い始めたころは、よく使っていました。 「makan」とは、マレー語で(ごはんなどを)食べるという意味の動詞です。"Let's
go jalan jalan.”(散歩に行こう。)なんて使い方もできます。 ちなみに「jalan」は、
「道」という意味で、「jalan jalan」になると「散歩」という意味になります。 英語のできるマレーシア人に、マレー語交じりでしゃべりかけるとすごく友好的に話してくれます。
タクシーに乗って、家までの説明をするとき、「Can you turn right?」と言うよりも、 「Can
you turn kiri?」と言うと、運転手さんはかなりニコニコ顔にっ! 「Can you speak
Malay?」とかならずうれしそうに聞いてきます。 運がよければ運賃をまけてくれるかも?!
日本人の場合でも同じですが、やっぱり外国人が自分達の言葉を少しでもしゃべってくれると グッと親しみ感は増しますよね。それと同じなのかも。
「マングリッシュ」について、お話してきましたが、 長年マレーシアに滞在している日本人の間にも、「マレーシア流ジャパニーズ・イングリッシュ」
なるものがあるのです!
:電話でのある日の会話:
バングサ・ショッピングセンターで食事をするために 待ち合わせをしていた2人でしたが・・A:山田さん(日本人ビジネスマン)
B:Aminaさん(マレー系マレーシア人、山田さんの友達)
B:Hi,Tanaka-san.This is Amina.What happened?
A:Hi,Amina. Sorry,lah〜!Today cannot come on time ne-.
B:Alamat! Why? Why?
A:Heavy traffic jam yo- You wait first ne?
B:Can,can! Of course,can! Ok,lah.
さて、どれくらいの人がこの会話を理解できたでしょうか?
これこそまさに、「マングリッシュ」です。 会話を説明すると、
B:田中さん、アミナです。どうしたの?
A:やあ、アミナ。 ごめんね〜。今日時間通りに行けそうにないんだよ。
B:あらま〜!どうして、どうして?
A:ひどい渋滞なんだよ。 そこで待っててくれる?
B:もちろん大丈夫!いいよ。
ということです。 相手が日本人だと分かると、なぜだか現地の人も名前のあとに「〜さん」をつけて呼びます。
そして、「マレーシア流ジャパニーズ・イングリッシュ」の特徴は、 日本語のように「〜か?」「〜ね?」のように語尾だけ日本語が残ります。
”Today cannot come ne-.”の文は、あまり強弱を付けずに、カタカナっぽく発音します。
「トゥデイ・キャノット・カム・ネー」のようにです。 ”Alamat!”は、日本語の「あらま〜!」と同じ意味で使い、発音も一緒です。
マレーシアでは、男性もこの言葉を使うんですよ。
「マングリッシュ」でもう一つ特徴的なのが、 ”Can,can!”のような表現。
”Can or not?”(できる?できないの?)なんて聞かれることもよくあります。 中国人系マレーシア人に多く聞かれますね。
私の父はこんな感じで毎日英語を使っていたので、初めて英語圏(ニュージーランド)へ 家族旅行へ行った時はショックを受けていました。
"Why bus not come ne?"と現地ツアーガイドに聞いたのですが、 まったく理解してもらえず、「もう英語はしゃべらない。」とめずらしくふさぎ込んでいたのを思い出します。
「マングリッシュ」の雰囲気つかんでもらえたでしょうか? マレーシア特有の英語。他では味わえないぶん、懐かしい思い出です。
こんな感じでしゃべれるようになったら、あなたもマレーシア人の仲間入りができるかも。
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