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  • Tom's Restaurant
by Kozue Endo in New York, 8.26.2000


そろそろ秋の気配。秋といえば食欲の秋。だから、ますます食べ盛り。NYに来てか ら私はすっかり体重計と疎遠になってしまった。よくないことである。そして、 「ま、いっか」と思えてしまう自分を時々恐怖に感じたり、頼もしく思えたりする今 日このごろ。ま、それでもよいのである。

さて、今回は正統派アメリカンにしよう。アメリカの定食屋さん、つまりダイナー。 その名はTom*s restaurant。7月1日号のこのメルマガでSong for NYCのコラムでも 紹介されていたスザンナ・ヴェガさんも通っていたというダイナーである。場所はブ ロードウェイの112丁目の北東の角にあり、青地に赤で「Tom*s Restaurant」と電 光がきらめく看板の店だ。最近おしゃれなレストランが増えてきたこのあたりで、古 くて薄汚れた感じのTom*sは一瞬見落としがちだけれども、この青と赤の電光は ちょっとやそっとでは忘れられないような独特の雰囲気をもつ。なんとなく60年代 にはこういうお店が流行ったんだなぁと思わせるレトロな空気が残っている店内には 「常連」の肩書きが似合うお客がカウンターでコーヒーをすすっていたりする。そし て、列車のボックス席のように2人がけの直角の席(オレンジ色の人工皮革)が向か い合って備え付けられ、その真ん中にこれまた備え付けのテーブルがおかれている。 このテーブル席には近くにあるコロンビア大学の学生らしき人たちが食事をしている ことが多い。

私が思うに、この店が一番味を出すのは夕方暗くなるあたりから8時くらいまでの間 である。それも肌寒くなる秋頃の夕闇にぽぅと例の赤い文字を光らせているTom*sの カウンターには軽く食事を済ませてしまおうという近所の一人暮らしっぽいおじいさ んがふらりといつもの席に着き、フライドチキンとポテトかなんかでビールを飲んで いて、その日の出来事や野球の話を独特の間合いでカウンターの中にいる店員と会話 をしていたりする。そして、テーブル席にはいかにも青春まっさかり!という20歳 前後の若者がキャーキャーはしゃぎながら大きなハンバーガーと大量のフライドポテ トを食べている。この対比にあるレストランへの安心感には日本人の私でさえ郷愁の 念をかきたてるものがある。きっと小さい頃、夕暮れの中に見つけた台所の光に共通 するものがあるのかもしれない。実は私はその雰囲気に気遅れをしがちでいつも窓か ら覗いて入ろうかなぁと思うのだが、いまだ入れないで入るのである…。いやはや。

私がよく行く時間帯は、この後の夜9時から12時くらいまで。これはちょっと大人 の時間帯である。なぜかというと勉強に疲れたコロンビアの学生がかなり放心状態に なりながらモサモサと夕食をしている静かな店内だからである。状況としては、近く にあるスーパーマーケットも閉まってしまいテイクアウトもできず、かといってあと 数ブロック先にあるレストランまでは体力が残っていない時に行き着く先がTom*sと いう結末が多い。周りも教科書を読みながらだったり、グループワークのつづきを話 し合いながら食べているという人達もいる。私はこうして店内でま勉強を続けている 人達を見て、何度励まされていることだろう。特に中間・期末テスト勉強の時期に、 「うー、疲れた。Tom*sで食事したら家に帰って寝てしまおう!」と思いながら店に 行くと、そこでもひたすらに勉強をしている学生を見て「うんにゃ、もうひとがんば りだな」と気合を入れて図書館に戻ることが何度もある。そんな時は手早くハンバー ガーを食べる。それからどうしても宿題が終わらなくて友人に手伝ってもらいようや く終えた真夜中の12時に「じゃ、お礼にTom*sでも!」と晴々と友人を誘い遅い夕 食をとることもあった。この時はちょっと豪華にハーフチキンのグリルだったかな。 そんなこんなできっとこのあたりに住んでいる人には思い出深い店のひとつだろうと 思う。

そんなに哀愁に漂わなくても、いかにもアメリカ!を楽しめるのは朝かもしれない。 これは値段が素晴らしい!$5位で日本で言う「モーニングセット」、アメリカでい う「ブレックファスト・スペシャル」ができてしまう。トースト、卵、ベーコン、 コーヒー、オレンジジュースのまさにコンチネンタルが楽しめる。味は寝ぼけていた 方が美味しく感じるかもしれないかな…。でもトーストの焼き加減やらフレッシュな コーヒーの味は結構いける。スザンヌ・ヴェガさんもこのコーヒーが大好きだったの かなぁ。

私はこのコラムで何度か「常連」について話をしているが、最近私には「常連」にな るのがなにやら不可能なことに思えてきている。なぜなら自分には「どこで、どんな 常連になるか」の像がまだ出来ていないのだ。結構よく行くお店は何件かありAその 中でお気に入りのメニューを発見したりしている。しかし、何度も同じものを食べる よりは、より新しい店やよりおもしろい料理を発見したりする方が、今の私には楽し いなと思う。ただ、新しいお店で空振りしてしまうと、口直しに「やっぱりあそこに 行こうか」なんてこともやってみたい。果たしてこのTom*s Restaurantが私のいつも の店になるのかはともかく、試験期間中にお世話になる店であることは確かだなと思 う。直ぐにできる濃厚なチョコレートシェイクやら、今日のスペシャルでおなじみの ひよこ豆のスープやクラムチャウダーは、私にとって「アメリカ版おふくろの味代 表」になるかもしれない。なんだか今回は真面目なお話になってしまった。Tom*sは 私にとって勉強と切っても切れない関係にあるからだろうか。全然真面目なお店じゃ ないんですけどね。

Tom's Restaurant
Broadway 112th Street

朝食$5前後
昼食・夕食$8から12前後でおなか一杯になります。
(註:チップ別)





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