|
|
|
■Songs from New York City■
- ニューヨーク・シティ・セレナーデ / Christopher Cross
by Shohei Nomura, 6.17.2000
serenade/
セレナーデ, 小夜曲, 夜の調べ (特に, 南欧の風習として男が恋人の家の窓の下で歌い, または奏する叙情的な楽曲)
ニューヨークにまつわる曲をピックアップして紹介するこのコーナー,今回取り上げてみたのは,Christopher Crossの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」。この,あまりにも有名なバラード,ラジオなどで流れる時もほとんど,この「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」というタイトルで紹介されているはず。でも,実はこれは邦題...つまり,このタイトルで親しまれているのは日本でだけなんです。
さて,そんな「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」,元々のタイトルは「Arther's Theme〜The Best That You Can Do」といって,81年にヒットしたアメリカ映画,「Arthur/ミスター・アーサー」の主題歌として発表されたもの。アカデミー賞の主題歌賞にも輝いた名曲で,作者として名を連ねているのは,70年代に星の数ほどの名曲を残したBURT BACHARACHを中心に,CHRISTOPHER CROSS,CAROL BAYER SAGER,PETER ALLENといった面々です。そして,この珠玉のメロディを,この前年にデビューし,新人ながらグラミーの5部門制覇を成し遂げたクリストファー・クロスが歌い上げています。彼の透明感溢れるハイトーンと繊細で手の込んだメロディとの相性の良さは,名作曲家・バート・バカラックが,「最初から,彼以外が歌うことは考えていなかった」と言っていることからも分かるはず。そして,歌詞もメロディに負けず劣らず美しいんです。
If you get caught between the moon and New York City
The best that you can do is fall in love.......
《もし,月とニューヨーク・シティの間で動けなくなってしまったら...あなたにできる最善のことは,恋に落ちること》
ですが,この曲がニューヨーク的かと言えば,決してそんなことはなくて,どちらかというと,西海岸的....70年代後半〜80年代に一世を風靡した典型的なLA産サウンドだと言えます。まぁ,アレンジを手がけているのは,AORシーンには欠かせない音職人,MICHAEL OMARTIANですし,バックを固めるのもいつものメンツですから,当然といえば当然のことかも知れません。でも,映画の舞台がニューヨークだったこともあってか,この「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」という邦題,楽曲に完璧にハマッているから不思議。とりあえず,美しい声と大きくかけ離れたクリストファー・クロスのルックスさえ思い浮かべなければ,華やかなマンハッタンの夜景が目に浮かびます。
ところで,本家(?)「New York City Serenade」が存在しているのをご存じでしょうか?こちらは,クリストファー・クロスからは趣が変わって,ニューヨークのお隣,ニュージャージー出身のロックシンガー,BRUCE SPRINGSTEENのナンバー。『BORN TO RUN/明日なき暴走』前夜の73年に発表された,『The Wild, The Innocent And The E Street Shuffle/青春の叫び』というアルバムに収録されています。C.クロスの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」が,夜空から見下ろした絵葉書の摩天楼だとすれば,この10分にも及ぶ長尺のバラードは,実際に歩くニューヨークのストリートにより近いと言えるでしょうか。この2つの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」,1度,聴き比べてみるのも楽しいかもしれません。
|
|
|