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NYTrendyの読者の皆さんへ
NYよりお届けしています、Rieko Shirakuraです。このメルマガの趣旨は
楽しいNYの最新の話題を皆さんへお伝えすることなので、今回のテロ事件に
ついて書くことは私達のポリシーから外れるのですが、自分がマンハッタンに
住んでこの事件の悲惨さを肌で感じたことを書き留めておくべきなのではないか
と思い、今回はレポート形式でお送りします。
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●●●The Act Of War●●●
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by Rieko Shirkaura |
2001年9月11日午前9時
私は”もう出かけなくちゃ、今日はやることが山積みだし”と焦っていた。今日に限って
目覚ましはならず、予定よりも一時間以上も遅れている。本来なら9時には学校へ
着いていたかったのにといらいらしていた。必要なものをすべてかばんに入れ、さて
行こうかと部屋の鍵をポケットに入れようとした時に電話が鳴った。それは電話会社
からのしつこい勧誘ですぐに断り電話を切った。今度こそ出かけようと、部屋から
出ようとした時にまた電話が鳴ったのだ。まったく、断ったのにしつこい勧誘だと
思い不機嫌な声で”Hello”とでてみるとそれは日本にいる母からで”ニューヨークが
大変なことになってる”とその朝の大事件を知ったのだ。
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母の電話ですぐにテレビをつけると、もう既にワールド・トレード・センターは黒い煙
がもくもくと上がり、ニュースキャスターはアメリカン・エアラインの旅客機がビルへ
突っ込んで行ったと言っている。”一体どうしてこんな事が?普通の旅客機がなんで?”
と目の前の光景が信じられずにいた。ところがすぐにニュースキャスターは”ハイジャック
された旅客機”と言ったのだ。瞬時に頭に浮かんだのが”テロリスト”だ。マンハッタンの
先端にあり、110階建ての高層ツインタワーのため標的にされやすい。1993年にも
このビルでは爆破事件が起きている。でもまさか今現在こんな状態になっているなんて。
私の友達が一人あのタワー2にある会社で働いている。私は友人のオフィスの電話番号は
知っていたが、会社が何階にあるかは聞いたことがなかった。もしも飛行機が突っ込んで
行った階に会社があったら絶対に助からない!私はテレビの画面に釘付けになり動け
なかった。
午前9時50分
ニュースはどんどん煙がひどくなっているツインタワーを映し続けている。会社へ出かけて
行った私のルームメートから、”今日は絶対に外に出ないで!ニューヨーク市にある会社
ではどんどん人が自宅へ帰って行っている、でも交通機関がすべてストップしているから
14丁目にある会社から歩いて帰るしかない”と連絡があった。電話はこの時既にパンク
状態で、私もニューヨーク市にいるすべての友達にかけまくったがどこも通じなかった。
彼女の会社からはちょうどツインタワーが見ることができる。先にやられたタワー1の
上の方がだんだんと傾いて行き、タワー2にぽっかりと開けられた穴から猛火が吹き出
しているのを、会社にいる彼女と同僚達は呆然と見ることしかできなかった。その電話の
すぐ後のことだ。ニュースキャスターがこう言ったのを聞いたのは。
"Oh...the tower 2 is now going to collapse...This is a sickening sight..."
(ああ、タワー2が今崩壊していきます。。。ひどく胸の悪くなる光景です。。。)
今、なんて言ったの?まさかあのタワーがつぶれてしまうの?自分の耳が信じられず、だが
テレビの映像はタワー2がゆっくりとまるでスローモーションのようにずるずると真っ赤な炎と
黒い煙を吐き出しながら崩壊していくのを映し出していた。”これじゃ死んじゃうよ。こんな中に
いたら友達が死んじゃう。” 私は、涙が止まらず吐き気をもよおしながらテレビの前にへたり
込んだ。
午前10時30分
ニュースは午前10時ちょっと過ぎにペンタゴン(米国国防総省)へまた旅客機が墜落
したと流している。他にもまだハイジャックされた飛行機があるらしいが、はっきりしたことは
分かっていない。一体どうしてこんな事が。一体誰がやったの?テレビはタワー2の崩壊
前にかなりの人が逃げ出せたと言っている。どうか私の友達もうまくその中に入っていて
欲しい、どうかできるだけ多くの人達が助かります様にとただ願うしかなかった。救助隊員
達も200人は既にタワーの中に入って救助活動をしている。タワー1からはどれだけの
人が逃げ出せているのだろうか?全く詳しい状況は分からず、ただテレビ画面を凝視
し続け新しい情報を待つしかできない。
タワー1の上の方は既に真っ黒になっていたが、それでもまだビルはしっかりしているよう
に見えた。ところが、その後すぐのことだ。これから先繰り返し流されることになり、自分の
脳裏にも決して消えることのない映像が映し出されるのは。タワー1はタワー2と同じくゆっく
りと真っ黒い煙をもうもうと吐きながら、だんだんとその煙にのなかに引きこまれながら沈ん
でいったのだ。それはまさに悪夢だった。他の音は何も耳に入らない。テレビの前に立ちつ
くし、ビルが崩壊していくさまをどうすることもできずにただ見つめるしかなかった。後には
真っ黒な煙だけで、あのニューヨークの象徴だったワールド・トレード・センターがこんな
卑怯なやり方で罪のない大勢の人達を巻き込みながら壊されてしまったのだ。
午後1時30分
ようやく私の自宅からも少しずつ電話が通じるようになってきた。だが、ニュースによると
マンハッタン内にある会社からは人が午前9時30分頃までに緊急事態だということで、
続々とそれぞれの自宅に帰っているらしく、オフィスにかけても誰もでない。タワー2に
いるはずの一人の友人をのぞいて、他の私の友達のオフィスは事件現場よりももっと
北にあるので大丈夫だろうと確信していた。インターネットにつなげて前日の月曜日に
帰国したJ−NYの浜田博信へニューヨークの現状況のメールを打つ。もし彼の
帰る便が一日ずれていたら大変なことになっていた。本当に無事に帰国できてよかった。
ロンドンに研修で行っている私の友人からもメールが入っている。彼はやはりワールド・
トレード・センターにあるインベストメント・バンクの本社で働くことになっていたが、研修が
先にありちょうど10日前にはニューヨークを離れていたのだ。
Rieko, please do email me back that everything is okay with you. |
Regards, |
John from London |
言葉すくなに書かれたメールからジョンの心配が伝わってくる。すぐに私は無事であること
と、ニューヨーク市の混乱状態を書いて送った。ジョンには他にもあのタワー近郊の会社
で働いている友人が何人かいるはずだ。海を越えてどんなに心配しているだろうかと
胸が苦しくなる。テレビでは、ビルが倒壊した直後のものすごいコンクリートの粉塵が
他のビルの間から押し寄せ、大勢の人がそれに巻き込まれない様に走って逃げて
いるシーンを映している。こんなの信じられない。どうしてこんな事が起きているの!
こんなの悪いジョークだ。私は両手で頭をかかえ、また気分が悪くなるのを必死におさえ
ていた。
午後3時20分
ようやくルームメートが帰宅する。彼女は事件後会社でしばらく待機していて、近所に
住む同僚と一緒にゆっくり歩いて帰ってきたのだ。道行く人達はみな落ち着いて声を
かけながら歩いていたようだ。彼女は途中銀行で現金をおろし、まだ開いている店で
買い物をして帰ってきた。彼女の会社で事件後すぐに帰宅準備をテキパキしていたの
はアメリカ人女性で、”この状態だと早く帰るしかない。みんなできるだけの現金を銀行
からおろして帰るように”とアドバイスし一番最初に会社から出ていったそうだ。
”怖かった。あまり怖がらない神経している自分なのにすごく怖かったよ。だって、
オフィスの窓から現場が見えるんだよ。みんなその光景を信じられなくて、社長が
偶然あのあたりにいてビルが崩れるのを目撃したって社に帰ってきた時に言った
けど、大の男がもう大泣きしていた。”と彼女は私に報告した。私は彼女に私の友達が
一人タワー2にいて今どこにいるか分からないと言った。”会社は何階なの?”
”そんな事いままで聞いた事がなかった” と言いながらビルが崩壊していくシーンが
再び頭をよぎり、私はあふれ出てくる涙を押さえることができなかった。
午後6時
ニュースはどのチャンネルに変えてもあまり新しい情報はない。テロ事件を指揮したと
の疑いがもたれているオサマ・ビン・ラデインは犯行を否定しているが、それでもメディア
はこれだけ用意周到に準備されたテロ事件を実行できるのは中東の国しかないとほぼ
断定している。クイーンズにあるアラブ系の人達が大勢住む地域をテレビは映している。
彼らは小さな子供も含めてビルの崩壊事件について歓喜していた。”狂ってる。こいつら
病気だよ。” ルームメートは吐き出すようにつぶやいた。
私はタワー2にいたと思われる友達のことをずっと考えていた。一番最近会ったのは8月
の半ばだった。お互いの状況を報告しあい一緒に夕食を食べたのだ。”どうか、あれが
最後になるなんて事にしないでください”と神に祈っていた。ルームメートは私の顔を見
つめながらもう一回自宅に電話を入れてみるように促した。”早めにビルから出ている
可能性もあるし、こんな状態だから帰るのに足止めを食ってて時間がかかっているのか
もしれないでしょ。”
うんとうなずいて受話器を取ったが、事件発生からすでに9時間も経っているし無事に
脱出できているならもうとっくに帰っていてもおかしくなかった。それなのに行方がまだ
わからないなんてと、ほとんど絶望的に電話番号をダイアルした。通話音が二回ほど
鳴って、”Hello”と聞き覚えのある友人の声が聞こえてきた。突然力が抜けていき何と
言っていいか分からない。”ああ、生きてたの。よかった。本当によかった。死んじゃった
かと思ってた。” ”ちょうど今帰ってきたところだったんだ。死んでないよ。会社には少し
遅れて行ったから地下鉄降りた時にはすでに周りは煙と粉塵で何が起こってるのか
分からなかった。会社に行くどころじゃなくて、近くのビルの中に避難していた。一体どう
したの?本当に飛行機がぶつかったの?どこの国のテロリスト?”と、立て続けに質問
してきて何がどうなっているのかの状況はまるで分かってないらしい。私は今現在で確か
な事を手短に説明した。友人の留守電には沢山メッセージが入っているのでまた落ち着
いたら話そうということで電話を切った。
午後7時30分
友人達の無事をすべて確認できた後、ほとんど一日中何も口にしていなかったことを思い出
し、ルームメートと簡単な夕食を食べようということになってキッチンで有り合わせの材料で
夕食を作っていた。ちょうどそんな時に私の部屋から電話が鳴っているのが聞こえた。
取ってみると東京にいる私のいとこからだ。”ニューヨークは大変だね。理恵ちゃん大丈夫?”
と心配してくれてかけてくれたのだ。いとこにも簡単にこのひどい状況を説明して、私は無事
だから心配しないでと電話を切った。
ルームメートとご飯を食べながらも、深いため息しか出てこない。ルームメートはふっーと
息を吐きながら”怖かった”を繰り返す。”でも、ちょうど同僚が近所に住んでいることが
分かって一緒に帰ってこれたからよかった。このアッパーウエストまで来ると、いつもと
変わらない雰囲気でもっとのどかな感じだったし、自分の慣れている地域だから安心
したよ。” 彼女の実感のこもる言葉を聞きながら、こんな事が起こるなんて間違っている、
明日は一体どうなるんだろうと私は考えていた。
午後11時30分
テレビはずっと朝からつけっぱなしだ。フラストレーションがたまるのは一体どれだけ
の人がビルから避難できているのかということがまるっきり分からないのだ。テレビの
ニュースのテロップには次々にツインタワーに入っていた会社のホットラインの番号
が流れている。タワーの中に入っていた会社の中で最大なのはモーガン・スタンレー
で3500人もの社員がいたとテロップは流している。言葉もなく画面を見続けていた
時にまた電話が鳴った。J−NYの浜田博信だった。
”よかった、やっと電話が通じた。全然通じなかったんだよ。でも、メールを見て無事だと
思ってたから。” ”のぶ、ひどいよ。こっちは。” と、朝からの事件を早口でしゃべり、日本
での状況を聞く。ニューヨークではローカルなニュースが中心として流され、事件の全体像
がなかなか見えてこないのだ。のぶからの話により分かったのは、テロリストはやはり
アラブ系であるだろうということと、犠牲者の数はおそらく1万人近くなるのではないか
ということだ。そんなに大勢の人が。。。もう言葉も出ない。こんなの戦争みたいじゃないか。
CNNニュースのLarry Kingがその夜のニュースでこう言った。
"September 11th, 2001. That date will inject our brain."
(2001年9月11日。この日付は私達の脳に突き刺さって行くだろう。)
☆☆☆編集後記☆☆☆
事件発生からやっと2日経ちました。今日からニューヨーク市は学校やオフィスは
14丁目を境としてそこから北は開いています。ニュースキャスターが”テロリストの
目的は国を混乱と混沌に陥れることだから” と言った時、それならそんな卑怯な
奴等の作戦に負けることなく、できるだけ早くいつも通りの生活に戻れるように
みんなで助け合っていかなくてはいけないと私は思いました。現在大勢の市民が
ボランテイアとなり、献血をしてできるだけの多くの人達が助けられる様にと懸命
に努力しています。献血に関しては赤十字の人がニュースで、これから数ヶ月に
渡りどんどん必要になることが予測される、特にO型の血液が不足するだろうと
いうことで、O型の私もできるだけ何回も献血していく予定です。
あのタワーの中やハイジャックされた飛行機にいたのはみんな普通の罪のない
人達です。家庭を持ち子供がいるお父さんやお母さん、共働きの夫婦や、学校を
卒業して働きはじめたばかりのまだ若い人達です。救命隊員や警官もたくさん
中に入っていったまま発見されていません。救命隊員の一人がニュースで、”これ
で父親を亡くした子供がどんなに増えてしまうんだろう”と涙声で言っていたのが
耳にこびりついています。
アメリカが今後どのような決断をして世界がどう動いていくかはまだ分かりません。
ですが、この事件は他人事ではありません。国境も人種も越えて同じ人間として
一人一人が考えていかなくてはいけない問題だと私は思います。アメリカ中の人
と世界中の人の心に深く深く傷をつけていったこの卑劣で卑怯なテロリストの行為
は動物以下です。絶対に許されないと思います。この事件によっての被害は膨大
なものになります。もしも日本で義援金を集めている機関があれば、被害に遭った
人達のために寄付をお願いしたいと思います。どうかよろしくお願いします。
どうかこんな悲惨な事件がもう二度と誰の身の上にも絶対に起きることのない様に
心の底から神に祈ります。
編集長 Rieko Shirakura
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