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■□■ブッシュ大統領演説 ― テロ事件後アメリカ国民に向けて■□■
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by Rieko Shirkaura |
このブッシュ大統領の演説は9月20日に国会で行われた。テロ事件後9日目のこと
だ。このスピーチはアメリカ国民だけに向けられただけではない。世界中の人達への
メッセージとしても伝えられるべきだと思い今回はその内容をここで紹介したい。最初
にこの演説をテレビで見たとき、アメリカ国民の間で広がりつつあるアラブ系の人達に
向けられる憎しみが不当なものであり、そして ”なぜイスラム教はアメリカ人を憎むん
だ?” という国民の疑問を払拭するであろうと私は思った。ブッシュは、憎むべき敵は
ビン・ラデイン率いるアルカイダというテロ集団だと、そして彼らが憎んでいるのはアメリカ
人ではない、我々の自由な思想だとはっきりと言っている。ブッシュの決して焦点のボケ
ない明確な演説はとてもわかりやすく、そして人の心に響いてきた。だが、ブッシュのように
誰もがこのような演説を行えるわけではない。はっきりものを言うことイコール問題の焦点
に的が絞られているというわけではないからだ。ここで日本の首相を引き合いに出してしま
うが、はっきりものを断言してもいつのまにかピントがボケてしまい問題がすりかわってしま
う演説は、聞いていると一体何を言いたいのかわからなくなってしまう。これが日本の政治家
達の特徴でもあると思うが、彼らは言質をとられまいとすることに必死になり、その結果だん
だんあいまいな表現しか出来なくなる。そのような演説では国民の心を動かすことなど出来
はしない。公共演説や議論のやり方、人を説得する力量は、アメリカ人達の方が数段上と
言わざるを得ない。アメリカ国民は、ブッシュ大統領の今回の演説で彼の心からの声を聞い
た。国民達の疑問を一つ一つ取り上げ、それを明確に解いていく彼の演説により、ブッシュの
支持率は史上最高の90%になった。
本当なら演説のすべてをここに載せたいところだが、膨大な量になってしまうので私の翻訳
と、ところどころの抜粋を皆さんに読んでもらいたい。
演説はまず、テロ事件直後に通行人達がけが人を助けたことに対する賞賛で始まった。そ
れから救命隊員達の働きぶり、通りにはアメリカの旗がたなびき、キャンドルに火がともされ、
祈りがささげられたこと。事件発生後9日間というもの世界中がアメリカ国民が強く団結して
いることを見ていると訴えた。
”今夜、我が国は危機に気づき、自由を守るため呼び起こされた。我々の悲しみは怒りへと
そして決意へと変化している。我々が敵を正義の前に連れ出すか、正義を敵の前に持っていく
かどうかは、正義そのものの力により行われるだろう。
アメリカ国民に代わってここで世界中の人たちの惜しみない支援にお礼を申し上げたい。アメリカ
はバッキンガム宮殿で、パリの街角で、そしてベルリンのブランデンブルグ門で歌われたアメリカ
国歌の歌声を決して忘れはしない。我々は韓国のソウルのアメリカ大使館の前に子供達が集まり
祈りをささげてくれたこと、そしてカイロの寺院での心からの祈りを決して忘れはしない。我々は
オーストラリア、アフリカ、そしてラテン・アメリカでの黙祷と喪に服してくれた日々を決して忘れは
しない。我々は80ものほかの国の国民がアメリカ人とともに亡くなったことを決して忘れることは
ない。大勢のパキスタン人、130人以上のイスラエル人、250人以上のインド人、エルサルバドル、
イラン、メキシコ、日本からの男女、そして何百というイギリス人達を決して忘れはしない。
9月11日、自由の敵はわが国に対し戦術を行った。アメリカ人は戦争を経験しているが、1941年
の日曜日のたった一つの例外を除き、過去136年間それは外国の地でのことだった。アメリカ人は
戦闘犠牲者を知っているが、それは大きな街の真ん中の平和な朝のことではない。アメリカ人は
いくつもの突然の攻撃を知っているが、それは決して何千という市民に対してではない。これらすべて
のことはたった一日で起こり、自由の地は一夜にして別の世界になってしまった。”
次の発言で大統領はこのテロ事件にかかわったのはビン・ラデイン率いるアルカイダだと名指しで
非難し、はっきりと国民の疑問に答える。
”アメリカ人は今夜多くの疑問がある。彼らは聞く、”我々の国を攻撃したのは誰なんだ?”
我々が集めた証拠が示すのは、テロリスト集団として知られている”アルカイダ”との関連だ。この集団
の中には、タンザニアとケニアのアメリカ大使館を爆破した犯人がいる。アルカイダの目的は金を稼ぐこと
ではない。その目的は世界中の人々に自分達の過激な思想を強要することにある。このテロリストは
イスラム原理主義でその過激派のやり方は、イスラム教の平和的な教えに誤解を招くとして多くの
イスラム教の聖職者や教養ある人たちに否定されてきた。テロリスト達に示された命令はクリスチャン、
ユダヤ人、すべてのアメリカ人を殺せということ、しかも女子供を含み市民と兵士の区別なく無差別に
殺せということだった。このグループのリーダーの名前はオサマ・ビン・ラデインで、エジプトのイスラム・
ジハードやウズベキスタンのイスラム教活動を含む様々な国の組織との関連がある。”
これらのテロリスト達はリクルートされ自分達の国やアフガニスタンのようなほかの場所で徹底的に
訓練されたのち、今回のような悪魔的な破壊行為を行うために世界各国へ散らばるのだ。ブッシュは
アルカイダを支持するタリバンに支配されたアフガニスタンの現状況を見れば、アルカイダの世界に
対する展望が見えてくるという。
”アフガニスタンでは女性は学校へ行くことは許されず、テレビを持っているというだけで刑務所行き
となる。宗教は彼らの指導者の指示のみにより実行され、男性はひげの長さが十分ではないと言う
理由のみで刑務所に入れられるのだ。アメリカ合衆国はタリバン政権のやり方を非難し、すべての
アフガニスタンの人々を尊重する。タリバンの行っているテロリストを支持するやり方は、アフガニス
タン人を抑圧することのみならず、世界中すべての人間を脅かしているのだ。殺人を援助しけしかけ
ることにより、タリバン政権も殺人を犯しているのだ。”
この言葉のすぐ後にブッシュはタリバン政権に対してこう要求する。
"Deliver to United States authorities all of the leaders of Al Quaeda who hide
in your hand.!"
(君達の中に隠れているアルカイダのリーダーをすべてアメリカに引き渡してくれ。)
”アフガニスタンにあるすべてのテロリストの訓練場を今すぐに、そして永久的に閉鎖してくれ。そして、
すべてのテロリスト達とその支援者達を当局に引き渡してくれ。テロリスト達が活動をしていないことを
この目で確認できるように、アメリカにテロリスト達の訓練場に出入り出来る権利をくれ。これらの要求は
交渉や議論の余地はない。タリバンは即刻行動を起こさなくてはならない。”
誤解がないようにイスラム教信者達に対してもブッシュはこう言う。
”全世界のイスラム教信者に対してもはっきりと言いたい。我々はあなた達の信仰を尊重する。その
教えは平和的であり、アラーの名において恐ろしい行為を犯したものはアラーの神に対する冒とくで
ある。アメリカの敵は多くのイスラム教の友人ではない。多くのアラブの友人でもない。我々の敵は
過激なテロリストのネットワークであり、それを支援するすべての政府でなのだ。
Our war on terror begins with Al Qaeda, but it does not end there. It will not end until
every terrorist group of global reach has been found, stopped and defeated.
(我々の戦争はアルカイダに対して始まるがそこが終わりではない。それは世界中に広がっている
すべてのテロリスト達が発見され、撃退され、撲滅するまでは終わらない。)
ここまでのブッシュの演説を聞いたとき私はこう思った。”ああ、きっとこの演説を聞いたすべての
アメリカ人はブッシュのことを信頼するだろう。” アメリカ人でない私でさえもこれらの言葉に説得
されていたのだ。ブッシュは次にこう続ける。
”アメリカ人たちはこう尋ねる。 ”なぜ彼らは私達を憎むのだ?” 彼らが憎んでいるのはたった今
この議会で行われていることだ。― 民主主義の政府を。彼らが憎んでいるのは、我々の自由だ。
宗教の自由、言論の自由、投票できる自由と、集会ができ、互いに異なる意見を持つことの出来る
自由を彼らは憎んでいるのだ。
彼らはエジプト、サウジアラビア、ヨルダンなど多くのイスラム教の国々の政府を転覆させたいのだ。
イスラエルを中東から追い出し、アジアとアフリカからクリスチャンとユダヤ人を追い出したいのだ。
このテロリスト達がやっているのは、単に人を殺すだけではない。人の人生までも破壊している。
彼らがアメリカに対する残虐行為により望むのは、アメリカが恐怖におびえ、世界から退却し、
我々の友人からも見放されることだ。彼らが我々の前に刃向かってくるのは、我々が彼らのやり方の
前に立ちふさがっているからなのだ。
このようなテロリスト達はこれが初めてではない。彼らは20世紀のすべての危険なイデオロギーの
後継者だ。彼らの過激な目的を果たすために命を犠牲にし、権力への望み以外にはすべての価値
を捨て、独裁主義、社会主義、そして全体主義のやり方をまねているのだ。そしてそれは、打ち捨て
られた、間違った信念の、歴史においてなんら印のない墓場へと向かうしかないのだ。”
そしてブッシュは言う。
"As long as the United States of America is determined and strong, this will not be an
age of terror. This will be an age of liberty here and across the world."
(アメリカ合衆国が決然とし強くある限り、これは恐怖の時代ではない。これはアメリカと世界における
自由の時代になるはずだ。)
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