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■留学生インタビュー■
- 第10回 野中美峰さん コロンビア大学大学院 修士課程
創作(Creative Writing)専攻
by Hironobu Hamada in New York,
・美峰さんはどこで何を勉強しているのですか?
コロンビア大学の芸術学部で創作(Creative Writing)を勉強しています。
・それは具体的にどういったプログラムですか?
だいたい2年から5年ぐらいのプログラムなんですけど、作家になりたい人が
集まってくるプログラムです。プログラムは3つに分かれていて、ノンフィクション作家に
なりたい人のプログラム、フィクション作家になりたい人のプログラム、そして、
詩人になりたい人のプログラムがあります。
・美峰さんはどのプログラムなのですか?
私は詩のプログラムにいます。
・具体的にどのようなコースを取りましたか?
また、それらのコース内容について簡単に説明してください。
1年目は、レクチャーが多くて、詩についてのコースを取りました。例えば、アメリカの
詩の歴史に関するコースとか、韻の踏み方に関するコースとかですね。
・韻の踏み方のコースですか?
ええ、英語での詩の韻の踏み方です(笑)。これは、必修になっているんですよ。
それプラス、現代文学のコースを取ることも可能になっているので、それらの
コースも取りました。あと、重要なのは、ワークショップです。ワークショップ
というのは、生徒がそれぞれ自分の詩をみんなの前で発表して、それについて
みんなでディスカッションすることなんです。
・では、クリエイティブなことが主なのですか?
そうですね、詩を書いたり、といったようなクリエイティブなことがコアになっていて、
あとのレクチャーとかセミナーはそのクリエイティビティを補うためのもので、いかに
そのクリエイティビティを成長させることができるか、ということに重点が置かれて
いるわけです。
・そうですか、では今までにどのような
詩やノンフィクションの作品を作りましたか?
私は、ノンフィクションはやらずにほとんど詩だったんですが、結構日本についての詩を
書きました。日本の万葉集からイメージしたものを書いてみたり、あと、日本の古事記
からイメージを膨らませてみたものを書いてみたりですね。
・日本の古事記ですか?
ええ(笑)。あとは、家族との思い出とかですね。
・そうですか。古事記からイメージして詩を書くと
いうのはすごいですね。ところで、美峰さんはアメリカに来てどれくらいですか?
アメリカに来て8年になります。私は、大学の時からアメリカに来たので。マサチューセッツの
Wellesley Collegeというところなんですが、そこに4年いました。ここは、だいたいボストンから
30分から40分程度のところにあります。それから、Wellesleyを卒業後にハーバードの博士
課程に入学したんですが、結局、博士課程を修了することをあきらめて、ハーバードでは修士だけを
取りました。それからコロンビアの今のプログラムに来たわけです。
・それは長いですね。ハーバードではどのような
ことを勉強したのですか?
ハーバード時代は、今と全く違ったことを勉強していて、Easy Asian Studyの中の日本文学を
勉強していました。比較研究みたいな感じなのですが、日本文学とアメリカ文学や
ヨーロッパ文学との比較などをやってました。
・美峰さんがアメリカの大学に留学しようと思った
きっかけは何ですか?
父がバークレーでビジネスのPh.Dを取ったのですが、そういったこともあって、父からアメリカの
大学へ行くように言われていたのが主な理由です。あと、私は日本では、女子高にいたのですが、
無理やり父からインターナショナルスクールに転校させられたんですが、このインターナショナル
スクールに行くと、学校の卒業証書が高校の卒業証書と文部省に認められていないんです。
つまり、各種専門学校になってしまうんですよ。それで、インターナショナルスクールを出た後の
オプションとしては、上智かICUかアメリカの大学しか道がないんです。その中で、ICUと上智では
自分のしたい勉強ができそうになかったのでアメリカの大学に留学することにしました。
・無理やり転校させられた、というのはどういうことですか?
それは、非常に厳しい質問ですね(笑)。あのう、やっぱり父はPh.Dがバークレーで、その頃のバークレーは
60年代で黄金時代だったのですが、その時に受けた印象というものが強かったんだと思います。
それで、自分の子供をどうしてもアメリカの大学に行かせたかったのではないでしょうか。
・なるほど、それで無理やりインターナショナル
スクールに転校させて、日本の大学に行けないようにしたと(笑)?
その可能性が高いですね(笑)。でも私は、始めは英語が全然得意じゃなかったんですよ。
中間テストなんかでも、みんながいい点数を取っている中で1人、60点や70点のあたりを
うろうろしてたんですが、本当に英語ができなかったんですよ。
・では、どのようにして英語力を上達させたの
ですか?
そうですね、それはやはり、一生懸命勉強しました。辞書をひいている夢を見るほどとにかく
辞書をひきました。それで辞書がぼろぼろになりました。
・単語を中心に勉強したということですか?
そうですね、単語を中心に勉強したのと、アメリカに来てからは、これは、リスニングの勉強のためなんですが、
テレビを一生懸命見ました。あと、ラジオも結構聞きました。それと、近くの教会に日曜日に
礼拝に通っていたのですが、そこでいろいろな人からアクセントをチェックしてもらったり
して、会話能力を上達させました。
・では、日本にいるときに単語を勉強して、リスニング
および会話はアメリカに来てから勉強したわけですか?
そうですね、日本にいるときは、リスニングは全然ダメでした。”セサミ・ストリート”などを
見ても全くわからなかったし。
・まあ、一般的にそうですね。ところで、美峰さんは
アメリカ留学をどのように準備しましたか?
そうですね、ずいぶん前のことなのであまり覚えていないんです。
・そうですね、8年前だったらね。
辞書をかなり持ってきたのは覚えてます(笑)。あと、日本文化の本を多くこちらに
もって来ました。やはり、アメリカに来てからも日本についていっぱい聞かれました。
・そうですか、それでは、最近の話を聞きましょうか。
コロンビアの入学はどのように準備しましたか?
コロンビアに関しては、GREについて一生懸命勉強しました。あと、クリエイティブなことを
勉強する予定だったので、入学前に日本文学を英語に訳したりして準備していました。
・TOEFLは免除されたわけですね?
そうです、TOEFLはアメリカの大学を卒業しているので免除されました。
・推薦状はどうしましたか?
ハーバードの先生に2通書いてもらって、あと学部時代の先生に1通書いてもらいました。
・ハーバードの先生の推薦状というのは
大きいですね(笑)。
でも、それは分野によりますよ。私の場合は、芸術学科を受けたこともあって、
えらい先生よりも、今活躍している人の推薦状のほうが実はよかったんですが。
・そうですか。今奨学金をもらっているのですか?
いいえ、もらっていません。
”ギフト”といういくらか学費を割り引いてもらうプログラムはあるんですが、奨学金の
プログラムはないんですよ。そういうシステムがあって、何人かの学生がもらえるようなのですが。
・それはどうすればもらえるんですか?
これは、入学する前に決まるのではなくて、入学してからの成績を見て学部の先生方が
決めるみたいです。
・では、コロンビアのSchool of Artsには奨学金の
システムはないのですか?
そうです、ないんですよ。コロンビアのSchool of Artsというのは本当にお金を生徒にあげないん
ですよ。School of Artsではコロンビアはお金を出さないことで有名なんです(笑)。
・(笑)それはPh.Dの学生も同じなんですか?
Ph.Dになると少し事情は違うと思うんですが、でもSchool of Artsはやはりお金を出さないと
思います。英文あたりだと出してもらえるみたいですが。
・留学準備で一番難しかったことは何ですか?
そうですね、コロンビアに来る時は、持って来る本がいっぱいあったので、それらを運ぶのが
大変でした。
・それは合格してからですね?
そうです。やっぱり、持ってきたい資料がいっぱいあったので。あと、精神的にこれから
新しいニューヨークという街に行かないといけないということが、少し重荷でした。
ニューヨークという街については、治安が悪いとか、
ペースが早いとか、いろいろなことを聞いていたのですが、そういう街に行くことについて
親がすごく心配していて、自分でも不安でした。
・そうですか。ボストンと比べて第一印象は
どんな感じでしたか?
いやあ、悪かったですね(笑)。非常に。
・(笑)具体的には、どういうところが?
ボストンというのは、いかにも清教徒の街という感じで、非常にきれいな街なのですが、
ニューヨークに初めて来たときは、やっぱりあまりきれいな街ではないと思いましたね。
あと、人がボストンと比べるとやはり不親切だと思いました。また、ペースがすごく
早くて、みんな自分が自分のことだけに勝手に行動してるように見えましたね。
・そうですね、そういうところはありますね。
初めて会ったときには、そういうことに辟易して自分にはこの街は向いてないんじゃないかと
思いました。
・今はもう慣れましたか?
慣れることは慣れたのですが、でもやっぱりたまに疲れますね。ニューヨークは
ペースが早すぎて疲れる街だと思います。
・そうですね、ゆっくり勉強したい人や
作家の人に取ってはボストンの方が向いている気はしますね。
気が付かないところで、人どうしのフラストレーションが日々たまっていくような気が
します。
・美峰さんがコロンビアを選んだ理由は何ですか?
コロンビア大学は、東アジア研究ですごく名前の知られた大学なんですよ。図書館に
行っても、日本の雑誌などが充実していて、資料の数も圧倒的に多いわけなんです。
これは、アメリカでも1、2を争う数ですね。ドナルド・キーンという日本研究に関して
第一人者の有名な先生がまだコロンビアにいますし。彼は、実はすごく三島由紀夫となかが
よくて、いろいろ彼の英訳本なんかも出しています。また、日本の有名な
作家や先生がよくレクチャーに来るので、そのこともコロンビアを選んだ理由の一つです。
瀬戸内寂聴さんもこの前コロンビアに来たんですよ。
あと、コロンビアは名前が知られた大学なので、将来の就職なんかを考えた場合にも、名前の
知られた学校のほうがいいだろうと思って選びました。
・確かに、コロンビアの東アジア図書館の
蔵書数はすごいですね。そこでアメリカ人が古今和歌集を原文で読んでいたりするわけで。
そうですね、アメリカやヨーロッパの日本研究というのは半端じゃないですよ。ケンブリッジ
あたりだと日本語を勉強する場合、古今和歌集の序から始めるという話も聞いたことがあります。
・ところで、美峰さんの今の生活はどんな感じですか?
今ですか?今はあまり幸せではないですね(笑)。ニューヨークは私にとっては疲れる街だし、
1人暮らしは大変だし。あと、アメリカ人のルームメイトと一緒に住んでいるのですが、
彼らが実はだらしのない人で。そのルームメイトの問題が一番大変でした。パーティとか開いて
すごくうるさいし、あと、台所などのかたずけとかもきちんとやってくれない人だったので。その結果、台所にねずみが
でるようになったんですよ(笑)。それで買ってきたお米とかもねずみに食べられたり。
あと、セメスター中は、Ph.Dの準備もあって、すごく忙しかったです。コースも、
文芸批評みたいなコースを取っていて、そのコースでは1週間に1冊本を読んで、
それについて批評を書かなければいけなかったんです。それにすごく時間をとられて、
すごく忙しかったわけです。
・具体的にどういった本の批評を書きましたか?
そうですね、イタリア人の作家のカルビーノの"Invisible Cities"という作品や、
詩のほうでは、トラークルというオーストリア人の詩人の作品などです。
・休日なんかはどうしていますか?
休日は、友達とビレッジのほうに行ってコーヒーを飲んだりしています。カフェめぐりが
実は好きなんですよ。あと、自分の好きな本を読んだりですね。
・そうですか。では、美峰さんにとって、ニューヨーク
でベストのカフェはどこですか?
結構気に入っているのは、"City Bakery"というお店がUnion Squareにあるんですが、そこの
ホットチョコレートがおいしいです。自家製のマシュマロを浮かべてくれるんですよ。
ここは、よく友達と勉強しに行ってました。
・わかりました。今度行ってみますよ。美峰さんの
将来の目標は何ですか?やはり、Ph.Dを取ることですか?
いや、それよりも、30歳になるまでに詩集を英語で出すことですね。日本で自費出版で
本を出したことはあったんですが、結局それは、雑誌にちょっと載ったぐらいでした。今は、
日本語で書くよりも、英語で書くことに私の気持ちは固まってきているので。
・それはぜひがんばってください。来年からは、テキサス大学のPh.Dのプログラムに
行くんですよね?
そうです。来年の9月からUniversity of Texas at HoustonのPh.Dプログラムに行きます。それは、
大学がお金を出してくれるということで選んだのですが(笑)。それで、これからは経済的には
楽になるんじゃないかなと思います。あと、ここのプログラムは私の分野では結構アメリカでは
有名なんですよ。
・ぜひ、がんばってください。最後にこれから
アメリカ留学しようと思っている人に一言アドバイスをお願いします。
アメリカに来るということは、アメリカの文化について学ぶということはもちろんなのですが、
自分について学ぶ、つまり自分のルーツについて学ぶということになるので、そういうふうに
心構えしておくと楽なんじゃないかしら。
・自分のルーツというのは、日本人であるという
ことですか?
そうです。アメリカに来ると、そういうルーツを問われる機会が多くなると思うんですよ。
それについての知識をある程度学んでから来たほうがいいと思います。
でも、これから留学する人にはぜひがんばってほしいです。
・今日はありがとうございました。将来、ぜひ英語で
詩集を出してください。
今回インタビューに応じてくれた野中美峰さんが参考までに、
彼女の詩の代表作を提供してくれました。感想などがありましたら、
support@j-newyork.comまで
メールをお送りください。
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The Dolls' Quarter
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Miho Nonaka
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It is strange how people mistake my hyacinth
For an imitation. The sound of rain orphans
My flower; its petals recurve like false lashes
In my grey room. "You will never be able to see
This star as I saw it. You don't understand:
It is like the heart of a heartless flower," says
Nadja quite removed from her growing insanity
I can only admire. Your neck smells of rain;
When the world is wet, I smell distant things
As if they were part of my body all this time.
The artist next door makes glass eyes that blink
At a marble's click, puts a lilac flame in each iris.
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このコーナーは約2週間毎に更新されます。今、インタビューに
応じていただける人を募集していますので、あなたの留学体験をウェブ上で伝えたいという人は
support@j-newyork.comまでメールください。
資格は、基本的に留学生であればだれでもOKです。
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